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第10-2話 誰かの視線

Auteur: 百舌巌
last update Date de publication: 2025-02-19 11:04:25

毛劉寺境内。

 男衆三人がそんな談笑しながら進む中、姫星は黙って後ろを付いて来ていた。姫星はここでも視線を感じていたのだ。寺の渡り廊下の端、或いは部屋の天井から、そこかしこから見られている感じがしていた。

『…… キャハハハッ』

 姫星の耳に子供の笑い声が聞こえ始めた。しかし、雅史たちは何も聞こえないかのように立ち話をしている。姫星は辺りの様子を伺うように見まわしてみるが何もいない。

『…… キャハハハッ』

 今度は天井の方から子供の笑い声が聞こえた気がした。姫星は直ぐに天井を見たが何も変わった様子は無い。すると目の端を何かが通り過ぎた。

「え?」

 聞こえている笑い声から、すっかり子供だと思い込んでいた姫星の目に映るのは黒い靄だ。それも向こう側が透けて見えている。

『…… キャハハハッ』

 また、笑い声が庭の方から聞こえた気がした。すると黒い靄はすぅっと消えて行く。姫星は慌てて見回したが、黒い霞はどこにもいなかった。

「この仏像はいつぐらいに作られた物なのでしょうか」

 観音菩薩像は銅製で高さが一メートル弱、優しげな眼差しで雅史を見ている。

「昭和の半ば頃に作られたと聞いてます。 
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